『幻庵-勝手にこぼれ話』 ~上P56
今回は必見です。
P56
『発陽論の作者・井上道節は恐ろしいほどの天才』
次の問題が、藤沢秀行先生が安田泰敏九段と藤澤一就八段と共同で1000時間も考えられたという問題です。
碁盤で並べられるように解答図を分けてみましたので、できればそのすごさを碁盤に並べて確認してみてください。
正しくこの問題の意味を理解できた時は、そのすごさに感動すると思います。
詰碁のようですが、盤面全体の形勢を良くしようという問題なのがすごいところです。
まずは下図、黒1から3で右下の白を攻めることで、右辺の白を取りにいっています。
これは右上一帯の黒を助けることにもつながります。
下図、白は右下の白は取られましたが、右辺の白を1から脱出して、右上の黒を取りにいく戦いが始まりました。
下図、黒は右辺の白も取らなければ右上の黒が取られて負けですので、黒2から封じ込める戦いです。
白11まで一本道で、白は右下と右辺でセキを目指しています。
セキになれば自動的に右上の黒が死ぬわけです。
このカラクリを発見するまでが第一関門(苦笑)
まだまだ続きます。
下図、白6まで右辺はセキになりました。
黒は右下もセキにされては負けなので、黒7と生きを目指します。
下辺の黒が生きれば、右下の白は自動的に白死。
すると右辺のセキも崩れて、右上の黒が復活するという仕組みです。
まるで機械仕掛けのおもちゃかドミノのようですね(笑)
白は下辺の黒が生きないように白10、12と抵抗します。
下図、白38までは黒が脱出できるかの勝負。
黒はいつでも黒イに対して白△と三目ナカデにする利き筋を見て、黒37まで逃げています。
黒イを決めない理由もあるのがすごいところ。
それは下記です。
ここがおもしろいハイライトです。
白38で中央の黒はアタリですよね。
白イと取られます(笑)
しかし白イと取ると右下の白が攻め合い負けになる仕組みが仕込まれているのです。
白イと取ってしまうとどうなるか?
下図、白1(白イ)、黒2(黒ロ)とお互いが石を取って、白3と眼を潰した図からご覧いただきましよう。
黒5(イ)、黒8(ハ)の後、白ニに両方とも入ることができないので、右下の攻め合いは黒勝ちになります。
同時に右辺のセキが崩れて、右上の全ての黒が復活。
これが白イと中央の黒を取れない理由です。
道節は恐ろしいですね(苦笑)
白1(イ)、黒2(ロ)、黒5(イ)、黒8(ハ)
少し整理しましょう。
右下で黒はセキから逃れようとしています。
白はイと取るとセキ崩れになるので手だしできません。
つまり広い意味で右下と右辺はセキのような状況です。
では白は右上の黒を直接攻め合いで取ってしまおうと考えます。
それが下図ですが、これがまたうまい具合に白が一手負けになっているのです。
もちろん道節はそのように作っているわけです。
本当にすごいです(苦笑)
31(30の右)、42(41の二路上)、44(41の上)、46(41の三路上)
ということで、下図。
白は右辺一帯では何もできないので、まずは下辺の白を白1と生きます。
そして左辺の白も生きていれば、右下はセキ。
自動的に右上の黒が取られてしまうので形勢も白良しです。
ここから第2ラウンドです(笑)
下図は左辺の白が生きるかどうかの詰碁です。
これは五目ナカデにしようと争っている進行です。
ここでも細かい応酬はあるのですが、碁盤の上で検討してみてください。
下図、五目ナカデになりました。
白死ですから、右下のセキは崩れて、右上の黒は自動的に復活です。
しかし、白にはまだ攻め合いの道が残されていました。
ここからの手順を追っていただけると分かりますが、
黒はまず左辺の白を盤上から取り上げてしまわなければ、
右辺のセキのところのダメを詰めることができない仕組みになっています。
ということで下図の攻め合いです。
続き
9(1)、12(11の右)、13(5)
下図、攻め合いの結果は白勝ちで、右上の黒が取られてしまいました。
しかし、白は右上を取っても形勢が悪いようにできているのです(笑)
4(2の上)、8(7の二路上)、10(2)、14(7の上)
下図。
分かりやすく石を取り上げる図をご覧ください。
左辺の白は取られていますので、右上の黒を取っても形勢は黒勝ちなのです。
道節恐るべし(笑)
最後の抵抗です。
下図、白は左辺の白を助けた上で、右上の黒も取らなければいけないので、白1と取るとかありません。
2(1の右)
そしてこれが本当にすごいところです。
下図、黒は右上の攻め合いに勝ちます。
そして白19から黒20と戦いがようやく終わって形勢はというと、黒が2目勝ちになるというのです!
6(5の二路上)、8(5の上)、14(5の三路上)
これを全て理解した時には鳥肌が立ちました。
つまり、右下から全体の形勢を争う中で、手筋のオンパレード。
そしていくつもある攻め合いのパターンは、それぞれが黒に取って都合が良くできていて、常に黒が形勢良しになっています。
この問題のすごいところは、攻め合いの手筋もさることながら、
途中で白がどんな抵抗をしても、形勢は黒良しになるように作られていることです。
道節は天才というか神ですね(笑)
これを作ってくれた道節には尊敬を通り越して言葉にならない感謝しかありません。
そして、これを解明された藤沢秀行先生、安田泰敏九段、藤澤一就八段にも同等の感謝と敬意を表したいと思います。
ありがとうございました。
碁盤に並べて確かめられた方も
おつかれさまでした。
次回はP66までです。

