初手『中央一間ジマリ』は、私が一時期愛用した布石ですが、これはある棋士との雑談のような検討からその真意を教わったものです。
初手『中央一間ジマリ』は、この真意を知らなければ、打ちこなせないものです。
私が低段時代に、苑田勇一九段とお酒の席で囲碁の検討をしていた時のことです。
苑田先生とは、お酒の席でも囲碁の検討がよく始まるので、教わりたい棋士は常に碁罫紙を持参していくのが定石でした(笑)
今ならIPADですかね(笑)
そして初手はどこが最善か?
という話の流れから、天元はどうや?
という話になり、
「でも天元の一子はウスミやからな」と苑田九段。
天元の石がウスミという感覚はプロならではでしょう。
当時の私にも全く意味が分かりませんでした(笑)
つまり白に攻められるから初手天元は有効ではない。
隅の星か小目の方が眼があるから初手としては正しい。
という意味の会話です。
少し専門的ですけどね(笑)
では、
「隅を二手打つならどの二手が良いのかな?」
といった話題になり、
「小ゲイマジマリか、一間ジマリか、大ゲイマジマリか」
「二間ジマリはないかな」
など話しているうちに苑田先生が
「オレは一間ジマリがパワーがあるから好きやけどな」
という話から
「一間ジマリは隅でなくても辺でも中央でもパワーがあるから有効や」
という展開になり、隅の一間ジマリを二本の指でスルスルスルっと中央にもってこられました。
「これ、ええんちゃうか」
といって初手『中央一間ジマリ』の検討が始まりました。
『中央一間ジマリ』は天元と違って厚味なんや。
「天元は一手では弱い石やけど、二手かけて一間ジマリした途端にパワーが数倍に跳ね上がって厚味になるんや」
「試しに白に数手連打されてもあまり脅威を感じへんやろ?」
私は「なるほど・・・」と苑田理論の一旦を垣間見た想いでした。
『中央一間ジマリ』の心を知った私は、それから公式戦で打ってみましたが同じプロ相手でも勝てるので、その良さを実感しました。
そして色々な棋士の目に『中央一間ジマリ』が披露され始めてから、
「この布石は赤木流やな」
と横田茂昭九段に言われて
「確か『中央一間トビ』は赤木先生が打ち始めたはずや」
と、その時この布石の起源を知ることになりました(笑)
赤木先生は関西棋院所属で苑田先生の先輩に当たるので、苑田先生は知っていたのかもしれませんね(笑)
でも『中央一間ジマリ』は厚味。
『初手天元』はウスミ。
この感覚は目から鱗の思い出です。
40~45年も前のことなので記憶は曖昧ですが、当時西沢克明先生に教えていただいたことは懐かしい思い出です。