2020年09月23日

伊藤加代子三段との王座戦

皆さん、こんにちは。
関西棋院棋士の星川愛生です。

最近は夜はもちろん、お昼でも涼しい日が続いてますね。
そろそろ長袖にしないといけないかも。

さて、今回は9月16日に伊藤加代子三段と打った王座戦を解説しながら伊藤三段のお人柄にもふれていきたいと思います。

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私の白番です。
白8のハサミは上辺に黒地を作らせない工夫。
以前はハサミというと攻める時や模様を作る時に打ちましたが、最近は相手に地を作らせない時にも用います。

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白8のハサミに黒9のツケは最近だと珍しい気もします。白10ではもちろんAとハネる手もあります。
ただ、白の目的はあくまで上辺なので白10のヒキから12とニ間に開きました。
黒は当然13と両ガカリに来ます。ここで白はどうするか…

さて、伊藤三段といえばつい2ヶ月前に三段に昇段されました!
二段になられたのが昭和56年との事なので、実に39年ぶりの昇段です。
これはひょっとしたら新記録かもしれません。しかも御歳82での昇段は快挙とも言えます。

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黒△に対して、白は14と自身の根拠を得る方針を取りました。
黒は15の下ハネは17、19と好形を作る手筋です。白は方針通り、20、22と一目を取って隅を生きました。
この時に24のケイマは重要な手。上辺の白を強化しつつ、右上の黒全体も少し狙っています。
ここで伊藤三段は25とコスツケましたが、この手がぬるかったかと思います。
この局面では手を抜いて他の大場に回った方がスピードがありました。

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黒25に白は間髪入れずに26と三々に入りました。黒37までは最新の定石の一つです。
ここで白は手抜きをして待望の38に回りました。
最初の白8のハサミと違い、黒を攻めつつ右辺を白地にする狙いのハサミです。
左下隅は白からBの切りを狙っています。

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少し局面が進みました。ここで私は白1とノビを利かして、3とカケツギましたがこの手は少し後悔しました。
黒2にポン抜かれて味消しな上に白3と頑張ったのでCの切り筋があって少し薄くしました。

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ここでは我慢して、白1のカケツギが手厚くて確かだったかと思います。
打っている時は黒2のサガリが心配でしたが、ここは些細なところです。

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実戦は黒1から黒5と下辺に展開して来ました。
こうなってくると黒からDのマガリが先手になります。Cの切り味がありますからね。

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しかし、白も心配してばっかりも駄目なので狙いの白6を決行しました。黒13は重い手で白14の打ち込みに回れば、下辺の黒を2つに割って白好調です。

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局面がかなり進んで、白が△に抱えたところで黒の伊藤三段が投了されました。
もし続けて打つなら、黒Aと生きて白もBと手を入れます。
白地は右辺から下辺にかけて巨大なので、黒はとても対抗できません。

投了図を見てもらったら分かるかと思いますが、下辺の黒を白が真っ二つの割った形になります。
その流れで白地を増やせたので理想的な展開になり幸いしました。

伊藤三段は手合がない日も、関西棋院に来て勉強してらっしゃるほど熱心で私も見習わないといけません。
以前は火曜にある研究会にも来てて、私も練習碁を何局も打っていただきました。
私も伊藤三段みたいにいつまでも情熱を失わない様に心がけたいと思います。

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2020年09月08日

関西棋院70周年式典

皆さん、こんにちは。
関西棋院棋士の星川愛生です。

前回の次回予告で私の手合の様子をお伝えすると書きましたが、大切な行事がありました!
それは関西棋院70周年記念式典です。
実は今年で関西棋院は設立して70年になります。
それを記念しての式典が9月2日に開催されました。
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式典は老舗の料亭の「花外楼」、指導碁は関西棋院の対局室で行いました。
私は指導碁フロアの案内役だったので花外楼にはほとんど出入りはできませんでした
なので式典の様子はお伝えできないのですが、指導碁は棋士の方も豪華メンバーです。
村川九段に結城九段、清成九段に瀬戸八段、余八段に本因坊リーグ入りを果たした佐田七段も来ていて
年始にあった打ち染め式より豪華かもしれません!
ただ、残念なのはコロナ禍のせいか指導碁を希望される方が少なく、式典が終わったら帰られる方も多くいらっしゃいました。
そこはとても残念でしたね💦
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しかし、普段は指導碁を打たれない棋士の指導碁とあって、来られた方々には満足していただけたかと思います。
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それと70周年にあたって記念の詰碁集「橘中之楽」を作ったので皆さんも宜しければお買い求めください。
関西棋院の全棋士がそれぞれ自作詰碁を出しているので他ではない物になっております。
関西棋院の囲碁サロンか、ホームページhttps://kansaikiin.jp/wp/goods/book/
でお買い求めいただけます。
100問以上あり、それぞれの棋士のプロフィールもあるので読み応えは充分あるかと思います。
お値段も1100円で棋書としてはお求めやすいかと
私もお稽古先に配るために10冊ほど購入いたしました(笑)
関西棋院の棋士の顔写真が載っている本はあまりないのでそこは貴重ですよね…
以前だと囲碁関西の新年号に棋士の顔写真が載っていましたが、今はないのでその代わりの意味もあります。

ちなみに「橘中之楽」の意味ですが、昔の中国で大きなみかんを割ってみたら中で仙人が囲碁を打って楽しんでいたという故事から来ていて、そこから転じて囲碁を楽しむ様子を意味する言葉となっています。
今回の70周年記念の詰碁集も皆さんに楽しんでもらえたらという想いで制作したのでぴったりの名前だと思います。
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2020年08月25日

囲碁AI「SAI」に関して③

皆さん、こんにちは。
関西棋院棋士の星川愛生です。

前回、前々回と囲碁AIの「SAI」についてご紹介いたしました。
このSAILeela Zeroと同じく、AI同士の自己対戦で強くなっています。
Leela Zeroは既に2000万局、打っていますね
人間なら1歳から100歳まで碁を打ったとして、1日辺り500局以上打つ計算になります…。文字通り人間では無理ですね💦
SAIの方はまだ日が浅いのか200万局くらいです。

実はこの自己対戦には我々一般人でも簡単に協力できます。どういう事かというと、自宅のパソコンでSAI同士を打たせてその結果をサーバーに送信して自己対戦の総数をみんなで増やそうという試みです。
漫画の例えで恐縮ですが、ドラゴンボールの元気玉をイメージしてもらうのが一番かと思います。

Leela Zeroの時はアイコンをクリックするだけで簡単でしたが、SAIに関しては登録制になって少しややこしくなったので、ここで詳細をなるべく分かりやすくご説明したいと思います。
因みに上記のリンクに誰が何局貢献したかを確認できます。

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上の画像がそうです。左がトータルの貢献した人と対局数で、右がここ1週間の分です。
手前味噌ですが、右の表には私の名前もあります(笑)本名ではなくペンネームなので分からないとは思いますが…

では実際に自己対戦で貢献する手順をお伝えします。まずは
にアクセスします。

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いくつか記入するところがあるかと思います。
まず「Computername:」、ここは皆さんの名前になります。アルファベットであれば何でも良いかと思います。ご自身だと分かるものにして下さい。
次に「Email:」ここは文字通り、普段使っているメールアドレスを入力します。
最後に「Password:」と「Confirm Password:」、ここはパスワードとその確認の入力です。この2つはもちろん同じものを入力して下さい。
入力が終わったら、Create Userをクリックします。数秒後には登録したメールアドレスに届くのでメールのリンクをクリックすれば、登録完了です。

登録が終われば、今度は実際にSAIを自己対戦させてファイルをアップします。
実はここはそんなに難しくありません。
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まずはsaiをダウンロードしたファイルを開きます。前回の通りに入れていたなら、Cドライブに「sai」というフォルダがあるのでそれをクリックします。
そうしたら、上記の画面が出るのでここの「sai.hta」をクリック。

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次に上の画面が開くので、登録した名前とパスワードを入力して、「Launch SAI」をクリックすればOKです。
三段目の「Optional Parameters:」は色々なオプションを追加できます。
例えば、「-g2」なら2局同時に対局を行ったり、「-k」ならAI同士の棋譜をSGF形式で保存して後から見れます。
RTX2080をパソコンに搭載していれば「-g8」で8局同時でも大丈夫です。
自己対戦を中止する時はウインドウを閉じれば大丈夫です。

以上でSAIの自己対戦に協力する方法をお伝えしました。
恥ずかしい話、SAIの自己対戦への貢献方法は最近調べて知りました。
登録するのは面倒ですが、ランキングみたいに貢献した対局数と順位が出るのはLeela Zeroの時には無かったので面白いと思います。
皆さんも良ければ、ご協力ください!
あなたの協力でSAIが更に強く進化するかもしれません
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posted by プロ棋士さん at 11:39| Comment(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月11日

囲碁AI「SAI」に関して②

皆さん、こんにちは。
関西棋院棋士の星川愛生です。

前回は囲碁AIの「SAI」に関して、少し触れました。
今回はSAIと対局する時の具体的な方法をご紹介していきたいと思います。

SAI単独では対局が出来ないので、まずは「sabaki」をインストールします。
sabakiを既にインストールされている方はこの項目は飛ばして下さい。

ここにインストールするためのファイルがあります。

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上の画像で、Windowsが32bitの場合は①を、64bitの場合は②のファイルをダウンロードして下さい。
最近のパソコンだと64bitが多いかと思います。

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ダウンロードしたファイルをクリックしたら上の画像になるので「インストール」を押せばsabakiのインストールは完了です。

次はSAIをダウンロードします。
このページでSAIのファイルをインストールします。

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主に4つのファイルがありますが、①Windowsが32bitでCPUのみ、②Windowsが64bitでCPUのみ、③Windowsが32bitでGPU搭載、④Windowsが64bitでGPU搭載になります。
あくまで目安ですが、10年以上前のパソコンであれば①、ここ数年で購入したのであれば②、最近のゲーミングパソコンあるいはGPUを意識して購入された方は④だと思います。

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ダウンロードしたファイルはzipという圧縮されたものなので解凍します。
解凍したファイルは今回、Cドライブにファルダ名を「sai」としました。
ここはどのドライブに入れても良いし、ファルダ名も自由に付けて大丈夫です。

次にSAIの最新のネットワークハッシュをダウンロードします。これは人間でいうと棋風とか脳の部分に辺ります。

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Upload Dateという項目の一番上の文字が青くなっているファイルをダウンロードして下さい。
今は443が最新ですが、どんどん更新されます。
ダウンロードしたファイルは「○○○○○.gz」となっています。これを「sai.gz」に名前を変更しましょう。
この「sai.gz」を先程作ったCドライブにある「sai」フォルダにコピーします。

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おそらく、上の画像の様になっているかと思います。ここまで来れば後はsabakiの設定のみです。
まずはsabakiを立ち上げます。sabakiの上にある、「ファイル」をクリック、更に「環境設定」をクリック。

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そして、「エンジン」をクリックすると上の画像の様になります。
①一段目、エンジン名を入力します。名前は何でも良いのですが、今回は『SAI』と入力。
②二段目、赤丸で囲んだアイコンをクリックして、Cドライブのsaiフォルダのsai.exeを指定します。
③三段目、ここはAIの細かい設定になります。
 四段目は秒読みで設定したい時に使います。
今回は秒読み設定はなしで設定します。具体的には
SAI
C:\sai\sai.exe
-g -w C:\sai\sai.gz -p 100 --noponder
と入力して下さい。
ここで注意点があります。三段目の『-p 100』とありますが、この『p』はプレイアウトの略でどれくらいパソコンに考えさせるかの設定になります。
数字が多いほど良く考えますが当然遅くなるし、ここが一番パソコンの能力が関係してきます。
ここではcpuのみの古いパソコンで動かすために『100』と設定しましたが、RTX2080というGPUを搭載したパソコンなら『-p 50000』でも一手5秒くらいで打ってくれます。
この辺りの数字はそれぞれで試すしかないかと思います。

では、実際にSAIと対局してみましょう。
sabakiを起動して、「ファイル」→「新規」をクリックします。

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上記の画面が出てくるので、白か黒かを選びます。置碁も可能です。人間の方は特に設定は必要ありません。
今回の設定では互先でAIには白を持ってもらいましょう。
なので、右端の「プルダウン(Vみたいなボタン)」をクリック→「エンジンを接続」→「SAI」を選択します。
これで設定は終わりで、後は対局するだけです。
もしも、この設定でSAIが打ってくれない時は

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上にある、「エンジン」→「エンジンサイドバーを表示にする」をクリックすると左側に上記画像の様に色々な情報が表示されます。
ここの「SAI(上記画像の青いところ)」をクリック→「着手を生成」でSAIが打ってくれます。
一度SAIが打ち出したら後は何もしなくても続けて着手してくれます。

かなり記事が長くなりましたがSAIとの対局方法は以上になります。
ただパソコンの環境はそれぞれで違うので、今回の通りにしても動かないこともあるので、その点はご了承下さい。


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posted by プロ棋士さん at 14:11| Comment(3) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年07月28日

囲碁AI「SAI」に関して①

皆さん、こんにちは。
関西棋院棋士の星川愛生です。

GO TOトラベルキャンペーンが行われていますが、新型コロナの感染者も増加してきて不気味な雰囲気です。
旅行で楽しむのも大事ですが、皆さんも充分お気をつけ下さい。

さて前回詰碁を出題したので、まずはその答え合わせとしましょう。

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黒先で生きる問題でした。

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黒1が正解になります。
生きる時のコツとして3つの幅がある場合、その真ん中が急所になる事が多いです。
いわゆる「三目の真ん中」ですね

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上の図の続きです。
白は眼を取るために2と来ますが、黒3とさえぎって白4、6に対しても分断していきます。
最後は黒7までセキとなり、黒の成功です。

詰碁は以上です。
前回の告知にあった通り、囲碁AIの一つである「SAI」についてお話いたします。SAIは今や囲碁AIでは知らない人がいない「Leela Zero」(※以下LZ)から派生したAIです。人間の棋譜を一切使わずに自己対戦のみで強くするのはLZと同じです。

LZとの違いの一つはコミの変動に対応している点です。現在、LZは内部でコミ7目半固定なので置碁や日本のコミ6目半には基本的には向いてません。
他にもLZからの変更点があるので興味ある方はSAIの概要のURLを記載しておきます。※英語のサイトなので私はブラウザの翻訳機能で読んでいます。https://github.com/sai-dev/sai#what

現在も強くなり続けているSAIですが、まだLZの方が強かったりします。
しかし、LZには無い新しい試みも取り入れたりしており、これから期待できるAIです。
私もAIと練習碁を打つ時はSAIを使っています。理由としては更新速度が早いので新しいのを試せる点です。
現在、1日1回は新しいバージョンがアップされます。LZの方はかなり下火で1ヶ月に1回あるかどうか…。

私の方針として基本的にAIとの練習碁は互先で打ちますが、全く勝てません。
置碁なら勝てるかもしれませんが、プロの手合は互先なので置碁の打ち方が上手くなっても仕方ないと考えています。
これには賛否両論があるかとは思います。

今回はSAIのざっとした紹介でしたが次回にSAIとの対局方法をご紹介いたします。

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posted by プロ棋士さん at 08:00| Comment(0) | 囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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